素敵じゃないか


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初めてThe Beach Boysの「Pet Sounds」に出会った時のことは今でも覚えている。

中学2年のとき、山下達郎のサウンドストリートで「God Only Knows」を聞いた。


1982年当時、The Beach Boysは音楽シーンからは無視されていた。

いいや無視はされていなかったが、それは夏の代名詞としてのサウンド。

村上春樹の「風の歌を聴け」では60年代の象徴として、

借りたまま返していない「California Girl」のレコードが登場する。


だけど、山下達郎が伝える「The Beach Boys」はそれとはちょっと違った。

サーフィンミュージックとしてではなく、Breian Wilsonのサウンドとして

「God Only Knows」を「Good Vibretion」をオンエアして熱く語っていた。

そしてそこに感化された。というより何か尋常じゃないものの予感を感じた。


次の休みの日「Pet Sounds」を探しに行った。

藤沢では結局見つけられなかった。

The Beach BoysのコーナーにはBESTアルバムしかなかった。

次に町田まで行った。

町田になければ新宿まで行こうと思っていた。

当時新宿はまだひとりで行った事がなかった。


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町田駅前に新星堂があった。今でもあるのだろうか?

そこに「Pet Sounds」のレコードはあった。


今でも忘れない。

その日は午前中にレコードを見つけて

町田のマクドナルドでお昼を食べて戻ってきた。

午後は家でレコードプレーヤーに「Pet Sounds」をのせて聞いた・・・


その日は実は部活をさぼって行った。

優勝を目指すような厳しい練習のクラブで

だけど自分の時間を100%そのクラブに捧げる気持ちがなかった。

自分にとっては音楽を聴く時間や、新しい音楽を探すためにラジオを聞く時間が大切だった。

のちにこのクラブを辞めるときに、顧問の教師が僕にこう言った。

「お前は音楽に逃げている。」


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「Pet Sounds」の一曲目「Wouldn't It Be Nice(素敵じゃないか)」を聞いて

自分がもの凄く遠くに連れて行かれる気がした。

未だにそれがどこなのかよく解らないし、そう言った感覚は他で感じた事がない。

それは「Pet Sounds」のこの一曲目にしかない感覚だ。


「お前は音楽に逃げている。」

だったら永遠に逃げ続けてやる。そのときそう思った。
遠くへ、遠くへ、遠くへ
「Pet Sounds」はそんな自分を遥か遠くへ連れて行ってくれた。

僕が逃げていたのは音楽にではなく、

みんなと同じ事をしていれば平気だという安心感にではなかったのか?

このアルバムはそんな大切な事に気付かせてくれた気がする。


もうすぐ自分の子供も当時の自分の年齢になる。



Wouldn't It Be Nice(素敵じゃないか)−The Beach Boys