あの娘ぼくがロングシュート決めたらどんな顔するだろう
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「寂しくて、悲しくて、辛いことばかりなら
あきらめて構わない大事なことはそんなんじゃない。

青春って1・2・3ジャンプ 暴れまくってる情熱
青春って1・2・3ジャンプ あの娘だけの汗まみれのスター」


岡村靖幸は僕より3歳年上で、80年代後半に(決して一世を風靡したわけではなく)
知る人ぞ知る、変態チックな歌詞とダンスの世界観を持ったアーティストだった。

だけど。
僕が知る限り、その時代一番リアルなアーティストだった。
そして、勝つことだけに価値があると言わんばかりのバブルの時代において。
あきらめることを歌っていたのに、あらためてびっくりした。

そして「あの娘だけの・・・」と歌う。
その時代、時代に逆行して僕らが求めていたパーソナルな価値観そのものではないか!
「僕ら」の話はまた今度ゆっくりするとして、
そんな「彼」の復帰コンサートに行って来た。

何の復帰?彼は2000年以降3度逮捕され、二度服役をして帰って来た。
覚せい剤中毒は彼の何を埋めていたのか?

そんな、ちょっと上から目線で、がんばった、がんばった、もうやるなよ!
みたいな感じで、懐メロコンサートにでも行くつもりだった。

だけど、会場となるSTUDIO COASTのある新木場駅を降りたときに、
会場へ向かう、至って普通な同年代の観客の中で、えらく緊張していた。

どうなっちゃってんだろう?岡村靖幸はどうなっちゃってんだろう?
期待10%不安90%のちょっとヤバめな心で、ライブ前からお酒が進む進む。

セルフカバーアルバム出して、少し印税稼いだら田舎でのんびりと、
そして毎年夏に全国のロックフェスでも廻ってのんびりと歌ってればいいんじゃない?
そんな風に想像しながら、彼が出て来て、歌い始めて、2曲目の「カルアミルク」を聞く頃まではそう思っていた。彼も緊張していた。まだ目に輝きは戻っていなかった。

だけど、それ以降どんどんとライブが進行するにしたがって、私の考えは大きく変化していく。時には異常なくらい長いインターバルで、酸素ボンベを吸いながら、彼は歌った。踊った。そして、音の一つ一つに意味を込めて私たちに投げかけて来た。

それはどんな意味か?
私たちファンとの関係性に依存することのない、絶対孤高の表現。
そこには当然46歳のロックスター。
だけど、圧倒的な何かがそこにはあった。
そう、彼は私たちと同じではなく、選ばれた存在なんだということに気付いた。

彼は明らかに今まで見たことのない天才である。そして復帰だとかブランクだとか
そんなことをここに持ち込むことのない正真正銘のエンターテイナーだ。

そして不謹慎にも、彼はあと何回薬物で捕まっても、その度戻って来て
最高なステージを見せて欲しいって、そんなことを望んでいる。

120%でないことには意味がない。
だったらとことん付き合う覚悟だ。それが破滅だろうと、死だろうと。
それが真のロックスターの運命。
そんなロックスターは実は今も昔もは彼しかいない。

そして次の日僕はもう二十回心の中で歌う。



『あの娘ぼくがロングシュート決めたらどんな顔するだろう』
作詞/作曲/編曲:岡村靖幸


あともう15秒で このままじゃ35連敗
僕の胸のドラムが ヘビメタを熱演している
汗で滑るバッシュー まるで謡うイルカみたいだ
あの娘ぼくがロングシュート決めたらどんな顔するだろう?

誰もがもうあきらめて 苦く微笑むけれど
僕らならできるはず
革命チックなダンキンシュート

青春って1,2,3ジャンプ 暴れまくってる情熱
青春って1,2,3ジャンプ あの娘だけの汗まみれのスター

あともう15分で この街とお別れしなくちゃ
窓の外からパパとママが手を振っている

寂しくて悲しくてつらいことばかりならば
あきらめてかまわない
大事なことはそんなんじゃない

青春って1,2,3ジャンプ 暴れまくってる情熱
青春って1,2,3ジャンプ あの娘だけの汗まみれのスター