a distance shore
IMG_3970.JPG

被災地の中で、写真を撮って廻っていて、一瞬目を疑った。
見渡す限り壊滅状態の、沿岸部の被災地の中で、
ひときわ高く風になびく、鯉のぼりを見つけた。

一瞬自分の心が混乱した。この南相馬市の沿岸部では500名が亡くなっている。
地面には基礎のコンクリートが残り、ここにもかつて家があったことがわかる。
亡くなった家族に向けて建てられた鯉のぼりなのかもしれない。
それとも、復興への想いを託している物なのか?

吸い寄せられるように近づいて行くと、
鯉のぼりの場所には一台の自動車が停まっていて、誰か人が居た。
そんなことに気がつきながらも、夢中でカメラのシャッターを押した。
しかしいくらシャッターを切っても、自分とその目の前の景色との距離は縮まらない。

そうしているうちに、そこに居た人は車に乗って私の横を通り過ぎて行く。
通り過ぎる瞬間、一瞬目と目が合ったような気がした。
私はカメラを片手にお辞儀をした。
車の運転をしている人も私にお辞儀をした。

そして、明日からは行けるだけ海岸線を北へ行こうと思った。
会社は一日休んでしまおう。

どこまでも遠い渚へ。