最後の教室
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越後妻有アートトリエンナーレ2009へ行ってきました。
新潟県十日町市、津南市を中心とした越後妻有地域で行われている、
大地の芸術祭と称する国際的なアートフェスティバルです。
ETC割引を活用し(!)行ってきました。

広い地域に300点以上の作品。とても一日では見て回れないのですが
今回はひとつの目玉として「廃校プロジェクト」というのがあり、
私も先月北海道の廃校に4日間行ってきたというのもあり、とにかく廃校を中心に
作品を見て回ろうと言う計画で行ってきました。

このトリエンナーレの開催趣旨に関しては
総合ディレクターの北川フラム氏の講演を参照して下さい。

「(グローバリズムにより)捨てられようとしている地域があり、
だけどそこで今も生活している人たちと
何か楽しい事をやろうというのが美術の役割である。」

でも、予定調和的な(仲良し的な)アートイベントだったら嫌だなって
思っていましたが、そんな心配吹き飛びました。

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まず、実際に行って驚いたのはその自然の圧倒的な力。
山間に広がる収穫前の水田、棚田
しかし、中途半端に手を加えられていないというのは、
逆にその地域が「捨てられている」という事実を意味する事を知る。

いくつか見た作品の中で、印象に残った作品を何回かに分けて紹介します。
いい作品もあれば、?な作品もある。
いい作品に共通して言えるのは(作品や理念そのものが)この地域や人々とシンクロしているもの。
よく、批判的ワードで独りよがりの作品に対して「アート」って使われるけど
ほんとうの「アート」って、独りだと作れないんだと再認識しました。

今日は
「最後の教室」
クリスチャン・ボルタンスキー+ジャン・カルマン(フランス)
この作品は「人間の不在」がテーマ。
他の廃校プロジェクトの多くがかつてそこにいた人々の「復活」がテーマであるのに対して
この作品は「人間の不在」そのものを直接的にメッセージとして送り出す作品。
(豪雪の時期に閉ざされているこの学校を見て考えたらしい。)

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光を遮断した、廃校の古い校舎
地元の、思い出の小学校の光を遮断してしまうところから、
彼の覚悟は尋常じゃない。
だけどここで繰り広げられる世界観も尋常じゃない。
体育館と、三階建ての校舎の中のすべてが作品。

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最初に入って行くのは、わらが敷きつめられている体育館
写真だと見えるけど、実際は真っ暗闇。
足の裏のわらの感触が強引に現実から異空間への扉を開く。

巨大なプロペラ換気扇
強烈な逆行のスポットライト
巨大な心臓の鼓動
点滅する光で一瞬見え隠れする理科室
積み上げられた教室の机と椅子
白い布は積もった雪
黒塗りの額縁
アクリルの棺桶のような箱の中で発色する蛍光灯
食品工場のようなビニールのカーテン

いろいろ書くと長くなるので写真だけ。(写真も暗くて撮れませんでしたが・・・)
でも写真や言葉だけで伝えられる物は何もありません。
そこへ行くまでの道のり、まわりの風景、そこにいる地域の人
そしてこの場所、この空気
それらすべてを含めて、この作品が完成されています。

ちなみに私はアート作品でこれだけの衝撃を受けた事はありません。
「学校の死」がテーマの作品ですが、
最近の現代アートにありがちな、オカルトでも、儀式的でもない。
真正面から取り組んでいる。
こんなにポジティブな世界観の表現ってすごいと思います。
「失われた時」の世界観です。

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正直、自然な風景が一番アートと思いますが、これは完全に認めます。
世界的に残るすばらしい作品と思います。

これを見に、来週もう一度新潟行きたい。
そんなふうに真剣に思います。
(たかだか200km。札幌→上士幌よりも全然近いので・・)

作品について詳しくは、もしくはいろんな人の感想を参考にしてみて下さい。

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